山麓王国

2023年10月の投稿91件]4ページ目)

2023年10月1日 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

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ニャルラトホテプ 2



ニャルラトホテプがわたしの住む街に来た。

ここは古くからある広い街であり、犯罪が絶えない危険な場所でもある。

友人はかれの秘術に傾倒して、わたしにその魅力を伝えた。

この大いなる謎をなんとか解き明かしたいという熱情に、わたしも心を動かされた。

友人は言う。

かれの身の毛のよだつ秘術は、予想をはるかに超えていた。

暗い部屋で、予言がスクリーンに映し出されるのだ。

いままで目では見たことのある光景が、スクリーンに映っている。

じぶんの目が、ニャルラトホテプに奪われたかのようだった。

ニャルラトホテプはバチバチと火花を散らしながら、予言をおこなう。

これも、いままで聞いたこともないようなものであった。

外国では、ニャルラトホテプに会ったものは、だれも見たことがない光景を見ているのだといううわさが流れているのだぞ、と。



わたしがニャルラトホテプに会いに行ったのは、暑い秋の夜のことである。

わたしと同様、かれに会おうとする落ち着きのない群衆に混じり、長い階段を抜けてある部屋に入った。

そこにはスクリーンがあり、廃墟の中にフードをかぶった人影が映し出された。

倒れた石碑から黄色い邪悪な顔がのぞいている。

わたしにはまるでこの世界が、宇宙の根源からくる暗黒の破滅に抵抗して、戦っているように見えた。

太陽は冷え、発せられる光も弱まり、世界はうねり、混ざり、もがいている。

そこへ観客の頭のまわりに火花が飛び散り、髪の毛が逆立ったものだから、みな驚きの声をあげた。

さらにスクリーンに筆舌に尽くしがたいグロテスクな影が現れたことで、観客たちは頭を抱えた。

しかしわたしは多少科学を知っていたおかげで、冷静でいられた。

「詐欺師め」「ただの静電気ではないか」

と震える声で抗議すると、ニャルラトホテプは部屋にいた全員を追い出したのである。

われわれはめまいのするような湿気と暑さの中で階段を降り、人気のない真夜中の街路へ出た。

わたしは「なにも怖くなかったぞ」と大声で叫んだ。

絶対に怖がるわけにはいかない。その場にいた人たちもまたわたしの声で安心したのか、一緒に声を上げた。

われわれはこの街になんの変化もなかったこと、われわれがいまも生きていることを確認しあった。

そのとき街灯が消え始めたのだが、われわれは口々に電力会社に文句を言い、みょうちくりんな表情をつくって笑い合ったのである。


#ラヴクラフト #ニャルラトホテプ

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