山麓王国

No.1227

Icon of nouennushi
「ミッション・ワイルド」という映画があります。

まだプライムビデオでみられるようです。

なんだかアクション映画のようなタイトルですが、さにあらず。

舞台は西部劇の時代のアメリカ西部ですから、じゃあ西部劇なのかというとそうでもない。

徹底したヒューマン映画です。

トミー・リー・ジョーンズが監督と脚本と主演を務めた作品で、おなじく主演女優にヒラリー・スワンク、ちょい役にメリル・ストリープが出ていたりと、そうそうたる顔ぶれ。

どういう映画かというと、アメリカという国の精神性・倫理性を暴いています。

作品の舞台である19世紀のアメリカは開拓時代で、白人たちが東海岸からアングロアメリカを広げていこうとする真っ最中です。

東部はすでに安定していましたが、ミズーリ川をへだてて西部はまだまだゴールドラッシュで、法整備も追い付かず、お金の価値も安定していない危険地帯です。

弱肉強食というか、みんな一攫千金を夢見て、女性の人権意識なんて存在しないも同然。

西部ネブラスカで農業をしながら敬虔に、堅実に暮らしていたメアリー・ビー・カディ(ヒラリー・スワンク)は、あるとき西部の厳しい暮らしに心が壊れてしまった3人の女性を、ミズーリ川を越えた東部のアイオワの教会に届けるという役目をみずからうけおいます。

道中、原住民に襲われたり、砂漠の狼に食われるかもしれない過酷な旅で、本来は男でなければできない役目なのですが、ほかの男どもはみな腰が引けている……もっといえば、心の壊れた役に立たない女のためにそんな危険を負う気になれないようで、メアリーが買って出たのです。

彼女は敬虔で勇気あるプロテスタント信者なんですが、30を越えても結婚できずにいます。

周囲の男たちはみんな資本主義に毒されていますから、堅実に生きてじぶんを持っている彼女を「男に対して説教臭く、つまらない女性だ」とけなすのです。

彼女は旅に出る前に、ジョージ・ブリッグス(トミー・リー・ジョーンズ)という、アメリカそのものを象徴するような軽薄な小悪党と出会い、ともに旅をすることになりました。



……まあ、オチを言ってしまうのはアレなのでこのへんにして、ぼくはこの作品を3度みて、そのたびにアメリカという国の抱えるジレンマについて気づくことがありました。

アメリカにはプロテスタントの尊い理念があるはずなのに、資本主義は理念を蹂躙し、正直者がバカを見るようなことになって、だれもこの理念を顧みようとはしない。

一瞬、プロテスタントの敬虔な理念に打たれることがあっても、すぐに忘れてまた資本主義の放縦な暮らしに戻ってしまう。

あの映画をみると、アメリカのプロテスタント精神はもう廃れているのかもしれない、とおもえます。

以前、クトゥルフ神話について調べたことがありましたが、アメリカの恐怖作家が創作した神話的世界観は、一部のコアなファンによって支えられ、「宗教のないアメリカに生まれた宗教」ともいわれたそうです。

「宗教のないアメリカ」というけれど、プロテスタントという宗教があるじゃないか、とおもいますが、それほど実際のアメリカでプロテスタンティズムは形骸化しているのでしょう。

おそらくこのアメリカにおける「プロテスタントの形骸化」が、クリスマスにせよバレンタインにせよ、アメリカから日本に輸入されてきた宗教イベントがなぜ空虚で、資本主義的なのかということを理解するとっかかりになるようにおもえます。

#与太話

編集

■複合検索:

  • 投稿者名:
  • 投稿年月:
  • #タグ:
  • カテゴリ:
  • 出力順序:

■新着画像リスト:

新着画像リストは出力しない設定になっています。

全230個 (総容量 183.18MB)

■日付検索:

■カレンダー:

2023年12月
12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31

■カテゴリ:

■最近の投稿:

最終更新日時:
2026年3月28日(土) 10時30分40秒〔7日前〕