山麓王国

No.233

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阿部定について調べていたのは単なる気まぐれで、なんであんな事件を、とおもったからなんですが、いまのぼくの理解力なりに気づけたことはあります。

彼女は若いころからヤンチャな子ではあったようですが、だんだんとヤンチャぶりが突き抜けるようになります。
そもそもがイケイケの性格だったわけですが、あの愛人の性器を切り取る事件は、二・二六事件の3か月後。
定が30歳のときです。


二・二六事件とは、陸軍内部の過激派が起こしたクーデターです。

このクーデターは未遂に終わりましたが、それまでもくすぶっていた日本国内の過激派がいよいよ台頭し、それによって政権内でも軍部が増長することとなり、太平洋戦争に突入していく決定打となりました。

単純にいえば、すごくきなくさい時代だったわけです。
個人主義、自由主義的な生き方が許されない空気が充満していました。

ところが定はそういう時代において、好きなように生きる。
その生き方は刹那的で、とうとう苦界に身を沈めながらも、好きなように生きるわけです。


しかし事件の一年前に足抜けして、東京の料亭で偽名をつかって働くんですが、ここでも料亭の亭主石田吉蔵と不倫します。

この不倫相手に、いわゆる阿部定事件が起こるわけです。

石田吉蔵との情事の様子はずいぶん詳しく証言されてるんですが、もちろん相手は死んでいるし、定の主観ですから、まるまるすべてを鵜呑みにするわけにいかないでしょう。

しかし証言を読む限り、定はアブノーマル……というより、常識と非常識の垣根をわざと越えたがるようなところがあったのではないかとおもえます。

彼女はヒステリー(解離性障害)があったというのですが、ヒステリーは、心的外傷が引き金になります。

彼女は15歳のときに、大学生と遊んでいるうちに強姦されてしまう経験をしていました。


ところで、最近ぼくに起こった、ものすごくしょうもない出来事でたとえますが、ぼくは先日自走式草刈り機の修理をしようとして、ボルトを無理に締めこもうとしたら、そのままネジ部分が切れてしまって、癇癪を起こして「こんなくだらない機械は、捨ててしまえばラクになる」とおもったんですよ。

もちろんそんなことをするのは「短気は損気」だし、常識的ではありません。
でも癇癪を起こしているときのじぶんはこういう思考パターンになります。

「常識に縛られて、この怒りが抑圧されるくらいなら、非常識でも怒りに任せてムチャクチャにしてしまったほうが、よほどマシだ」

と。
もちろんいい年したおじさんだから、そこはグッとおもいとどまるんですけどね(笑)


ぼくはオッサンなので女性の気持ちはわからんですし、この一節はあくまでぼくの想像にすぎませんが、大事な貞操を軽薄に蹂躙されるような経験をしたとき、そのまま異性や性行為に恐怖をおぼえてしまうタイプもいれば、あえてアクセルを全開に踏み込んでムチャクチャするタイプもあるのではないか。

定の元来の性格もあるとはおもいますが、彼女が大学生に強姦されたとき、やり場のない怒りを常識によって抑圧するくらいなら、おもいきり非常識に傾いて、ムチャクチャなことをして心のバランスをとるほうが、まだマシだと感じたとするなら、ああいう極端にアブノーマルで、男性蹂躙的な行為に及んだのも理解がいくような気がします。

いずれにせよ、定は愛人が求めるまま、絞首プレイを楽しみ、その後も睡眠薬を服用させて、相手の望むまま首を絞めて殺害し、陰茎と睾丸を切り取って持ち歩き、三日後に逮捕されます。


この事件があまりにもセンセーショナルなために、その場面だけがクローズアップされるわけですが、ぼくが彼女のことを調べながらおもったのは、この事件以外の彼女は、なんというか、ものすごくふつうなんですよね。

最初はただの個人主義者で、刹那的に生きているように感じていたし、実際そのために苦労していて、晩年も恋多き人生ではあったようだけど、よくよくみていると、人間関係や義理人情を大事にしているから、常にだれかが彼女を支えており、彼女も社会に対して極力迎合しようと努力している。

この社会になんとか居場所を持とうとしている姿には、一種のいじましさすら感じます。


しかし、だからこその凄味というか、ごくふつうの人であればあるほど、事件の猟奇性がまた一段と際立ってくるんですよね。
#与太話

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