山麓王国

No.741

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怪奇小説を書く際の覚え書き (後半)

HP ラヴクラフト著




5つの規則をかきだしましたが、この最初の段階はほとんど頭のなかでの作業です。

話が頭のなかで練り上げられ、具体的にシナリオを肉付けする準備が整うまで、書き出すことはありません。

アイデアをどう発展させるべきか決まらないうちに、実際に書き始めてしまうこともありましたが、これはあとあと問題になりがちです。

おもうに、怪奇小説の表現は4種類にわかれます。

雰囲気や感情の表現。
絵画的な概念の表現。
一般的な状況や状態、伝説あるいは知的概念の表現。
最後に、くっきりとした特定の劇的な状況、またはクライマックスの表現。

もうすこし突っ込んでいえば、さらに2つの大まかなカテゴリーがあるといえるでしょう。

ひとつは、なんらかの状況や現象に対する驚異や恐怖を描いたもの。
もうひとつは、怪奇現象に対する登場人物の行動を描いたものです。


 怪奇小説の中で恐怖を分類すると、5つの要素があります。

(a)根源的な恐怖、異常、状態、実体など。

(b)全体的な効果、挙動としての恐怖

(c)恐怖があらわれるときの様式。恐怖が実際にあらわれたときのカタチや、その現象の観察。

(d)恐怖にどのように反応するかということ、そして

(e)これらの条件にともなって、恐怖が特定の効果を発揮すること。

 
 怪奇小説を書くとき、わたしは常にムードをつくるようにしており、重点を置くべきところにも細心の注意を払っています。

いかに三文小説といえど、怪奇現象を目の当たりにして、当たり前の日常でも語るように表現するような愚かなことは、相当な未熟者でない限りやらないものです。

想像を絶する出来事や状況を描くには、物語のあらゆる段階で注意深くリアリティを維持する必要があります。

中でも、物語の核となる怪異が起きたときは、その存在自体が物語の登場人物や出来事を覆い隠してしまうほどですから、慎重に登場人物の情動を「構築」して、印象的かつ慎重に扱われなければ、単調で説得力のないものにみえてしまいます。

この驚異に触れるときを除けば、かれらは一貫して自然でなければなりません。

物語の核となる怪異に関しては、圧倒的な感情を表現しなければなりません。ここは決して当たり前のことではないのです。

たとえ登場人物たちが驚異に慣れてしまっているだろうという場合でも、読者に合わせて、臨機応変に怖がらせるべきなのです。こういう部分を軽んじると、せっかくのファンタジーが台無しになります。


 怪奇小説というフィクションに求められるのは、人の動きよりも、雰囲気です。
事実、怪奇小説は、人間の気分を鮮明に描写しているだけなのです。

それ以外のことをすると、安っぽくて幼稚な、説得力のないものになってしまう。

非現実的な、奇妙な現実が、ぼんやりした幻想を構築した際に、微妙にほのめかされたもの。
こういった、われわれが知り得ない細かい気分の濃淡や、手がかりや手応えに、もっとも重点が置かれるべきでしょう。

奇妙な出来事に対して、むきだしの情報を羅列するようなことをしたって意味がありません。

これらは、わたしが本格的にファンタジーを書こうとしてからずっと、意識的にせよ無意識的にせよ従ってきたルールです。

このルールが成功しているかどうかは議論の余地があるかもしれませんが、すくなくともわたしに限っていえば、このルールを無視していたら、いまよりはるかにわるい作品になっていたとおもうのです。

#怪奇小説を書く際の覚え書き #ラヴクラフト

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