山麓王国

No.1025

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司馬遼太郎の『雑談 昭和への道』の最終回を見ました。

明治期の日本の知識人は国際社会の中で相対的に自国を考えることができたのに、軍部が台頭していくにしたがって、日本を絶対的なものと考えるようになる。

昭和になって、他国との関係性の中の日本という相対的な見方ができなくなって、太平洋戦争に向かい、そして敗戦に至った。

そういう話でした。



司馬さんはこれだけ深く調べて、実際に取材もし、洞察していたにもかかわらず、初回ではあの時代のことがわからないとおっしゃいました。

昭和に入ってから敗戦に至るまでの20年は、まるで魔法使いが杖をポンと叩いて、日本を魔法の森にしてしまったような時代だったというのです。

それで司馬さんはこの魔法を解くカギを……それも自前でそのカギをつくりたいとおもったそうですが、うまくいかないそうな。

ぼくはこのテレビ番組を見始めたとき、そりゃああの戦争の当事者が、フラットな目線であの時代を読み解くなんてできるわけがないとおもったものです。

そういうことはたしか以前にも書いたはずで……ああ、やっぱり書いていました



でも最終回まで見ておもったのが、じつは司馬さんにはもうほとんどあの時代のことがわかっていたのではないか、ということでした。

魔法を解くカギもほぼできあがっていて、そのうえで、魔法を解く役割はあとの世代に任せた、といってるんですよね。

ぼくが言ったようなことは司馬さんはもうとっくに承知で、わざと最初に、魔法の森のカギの開け方がわからない、とおっしゃっていたようにおもえます。

あの時代を軍人として真正面から体験した司馬さんは当事者として、太平洋戦争を客観的な「物語」にすることができなかった。

あの時代のことを書くとなると発狂してしまうとまで言う、それほどの当事者ですから、魔法の森の魔法を解くカギをつくっても、司馬さんはそれで錠前を開けるところまでいけないわけです。

なので、司馬さんはこの番組において、ご自身の客観視そのもの……つまり司馬さんがつくったカギを、われわれに投げかけたということなのだろうな、と。

#与太話

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