山麓王国

No.450

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NHKの『生誕100年 司馬遼太郎 雑談「昭和」への道(1) 何が魔法をかけたのか』をみました。

ずいぶんむかしの放送で、62歳の司馬さんが直接ひとりで、カメラに向かって話しかけるというものです。


司馬さんは歴史作家でしたが、とうとう太平洋戦争については書けずじまいに終わりました。
書かなかったのではなくて、さんざん調べ、さんざん同時代の人間から話を聞き、さんざん悩んで、とうとう書けなかった。
その懊悩がよくわかります。

第二次世界大戦に至る国家の空気の変化を、魔法使いが杖を叩いて、魔法の森にしてしまったような、じつに不思議なもの、とたとえます。

そして、この「魔法を解くカギ」を司馬さんは探していて、それもよその思想から借りるのではなくて、自前のカギで開けたいと考えたけど、うまくいかない。


岡目八目というやつで、失礼ながらぼくのような世代の離れた人間は、こんなふうにおもうわけです。

「それは司馬さん、やっぱりあの戦争を直接経験した当事者が、客観的に明快に片付けるということは、ちょっとできないんじゃないでしょうか」

と。


じぶんが経験してしまった以上、その強烈に悲惨な経験を、主観抜きで客観的に、こういうことだったと論じることは、ちょっとできないんではないか。

客観視しようとしても、じぶんが経験したという主観がどうしたって邪魔をする。

じぶんの家が空襲で焼けたということを、小さなことのうちに入れなければならないような時代を直接経験して、どうやってそんな時代をカギひとつで開けることができるのか。

実際司馬さんは、「あんな馬鹿な戦争を」と何度もおっしゃる。

それはもうすでに、司馬さんが時代の当事者として、主観で考えるからそう感じるのであって、むしろその強烈な主観のせいで、司馬さんほどの作家ですら太平洋戦争をおおきくとらえて結論を出すことができなかった、ということ自体が、太平洋戦争のひとつの物語であるようにおもえました。

#与太話

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