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怪奇小説を書く際の覚え書き (後半)

HP ラヴクラフト著




5つの規則をかきだしましたが、この最初の段階はほとんど頭のなかでの作業です。

話が頭のなかで練り上げられ、具体的にシナリオを肉付けする準備が整うまで、書き出すことはありません。

アイデアをどう発展させるべきか決まらないうちに、実際に書き始めてしまうこともありましたが、これはあとあと問題になりがちです。

おもうに、怪奇小説の表現は4種類にわかれます。

雰囲気や感情の表現。
絵画的な概念の表現。
一般的な状況や状態、伝説あるいは知的概念の表現。
最後に、くっきりとした特定の劇的な状況、またはクライマックスの表現。

もうすこし突っ込んでいえば、さらに2つの大まかなカテゴリーがあるといえるでしょう。

ひとつは、なんらかの状況や現象に対する驚異や恐怖を描いたもの。
もうひとつは、怪奇現象に対する登場人物の行動を描いたものです。


 怪奇小説の中で恐怖を分類すると、5つの要素があります。

(a)根源的な恐怖、異常、状態、実体など。

(b)全体的な効果、挙動としての恐怖

(c)恐怖があらわれるときの様式。恐怖が実際にあらわれたときのカタチや、その現象の観察。

(d)恐怖にどのように反応するかということ、そして

(e)これらの条件にともなって、恐怖が特定の効果を発揮すること。

 
 怪奇小説を書くとき、わたしは常にムードをつくるようにしており、重点を置くべきところにも細心の注意を払っています。

いかに三文小説といえど、怪奇現象を目の当たりにして、当たり前の日常でも語るように表現するような愚かなことは、相当な未熟者でない限りやらないものです。

想像を絶する出来事や状況を描くには、物語のあらゆる段階で注意深くリアリティを維持する必要があります。

中でも、物語の核となる怪異が起きたときは、その存在自体が物語の登場人物や出来事を覆い隠してしまうほどですから、慎重に登場人物の情動を「構築」して、印象的かつ慎重に扱われなければ、単調で説得力のないものにみえてしまいます。

この驚異に触れるときを除けば、かれらは一貫して自然でなければなりません。

物語の核となる怪異に関しては、圧倒的な感情を表現しなければなりません。ここは決して当たり前のことではないのです。

たとえ登場人物たちが驚異に慣れてしまっているだろうという場合でも、読者に合わせて、臨機応変に怖がらせるべきなのです。こういう部分を軽んじると、せっかくのファンタジーが台無しになります。


 怪奇小説というフィクションに求められるのは、人の動きよりも、雰囲気です。
事実、怪奇小説は、人間の気分を鮮明に描写しているだけなのです。

それ以外のことをすると、安っぽくて幼稚な、説得力のないものになってしまう。

非現実的な、奇妙な現実が、ぼんやりした幻想を構築した際に、微妙にほのめかされたもの。
こういった、われわれが知り得ない細かい気分の濃淡や、手がかりや手応えに、もっとも重点が置かれるべきでしょう。

奇妙な出来事に対して、むきだしの情報を羅列するようなことをしたって意味がありません。

これらは、わたしが本格的にファンタジーを書こうとしてからずっと、意識的にせよ無意識的にせよ従ってきたルールです。

このルールが成功しているかどうかは議論の余地があるかもしれませんが、すくなくともわたしに限っていえば、このルールを無視していたら、いまよりはるかにわるい作品になっていたとおもうのです。

#怪奇小説を書く際の覚え書き #ラヴクラフト
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怪奇小説を書く際の覚え書き (前半)

HP ラヴクラフト著


わたしが小説を書く理由は、ある場所に行ったときの驚きや美しさ、冒険の期待のようなぼんやりした感覚を、わたしがこれまで積み上げてきた経験によって、より明確に表現して満足したかったからです。

なかでも怪奇小説を書くことを選んだのは、あくまでわたしの好みの問題です。

わたしは長年、時間や空間、自然法則のような、この世でわれわれを縛るものを停止させて、奇妙な幻想に浸りたいと願っていました。

時間や空間や自然法則に縛られるせいで、わたしたち遠い未知の世界である無限の宇宙空間への好奇心が挫折してしまうのです。

またわたしの物語では恐怖を強調しますが、それは恐怖がわたしたちの根源的で強烈な感情であり、幻想を生むのにもっとも適した感情だからです。

恐怖は未知のものや奇妙なものと密接に関係しています。
だから、自然法則の崩壊や、宇宙の異質さ、あるいは「異界」のようなことを、恐怖抜きに語るのはむずかしいのです。

あとわたしの物語では時間が重要な役割を果たしています。
わたしには時間こそが宇宙でもっとも残酷な恐怖におもえるのです。

人間と時間との対決は、もっとも実りある力強いテーマであるとわたしにはおもえます。



わたしの作風はあきらかに特殊ですし、あまり万人受けするとはおもえません。
それでも、わたしがやっているようなことは、文学が始まったときからずっとだれかがやってきていることです。

割合としては少数でしょうが、未知の宇宙空間に燃えるような情熱を感じ、現実という既知の牢獄から抜け出して、信じられないような冒険と夢の、無限の可能性を秘めた仙境へ向かいたいと願う人は常にいるものです。

深い森、幻想的な都市の塔、燃える夕日といった夢が、わたしたちに一瞬の暗示を与え、そして目の前に仙境が広がるのです。

わたしのようなアマチュアのみならず、ダンセイニー、ポー、アーサー・マッチェン、MR・ジェームズ、アルジャーノン・ブラックウッド、ウォルター・デ・ラ・メアは、この分野の偉大な作家たちです。



わたしの物語の書き方はひとつではありません。わたしはいろんなやり方で物語を書いてきました。
夢をそのまま書き留めたことだってあります。

しかしふだんは、表現したいことを決めて、話の展開を具体的な言葉でみなさんにお見せできるように推敲します。

わたしがよくやるのは、気分、アイデア、イメージに適した条件や状況をリストにして、論理的で自然な動機を推測していくというものです。

もちろん実際の執筆のプロセスは、テーマや着想によってさまざまですが、もしわたしの全作品を分析して平均したとすれば、以下のような一連の規則があるとおもっています。



(1)まずシナリオを用意します。最初は物語的な肉付けは後回しにして、出来事が起こる順に記述します。
要点を網羅して、じゅうぶんな長さで記述します。この枠組みの段階で、予測できる結末を詳細に記述するのもよいでしょう。

(2)ふたつめのシナリオを用意します。こんどは物語を肉付けしていきます。最初につくったシナリオをもとに、視点の変化、強調、クライマックスに変更がないか、メモをしておきます。
これによってストーリーに劇的な力がもたらされたり、全体的な効果が高まる場合は、もとのあらすじを変更します。
重要なイベントは自由に追加、削除をおこないます。最終的にまったくちがう物語になったとしても、最初のシナリオにとらわれてはいけません。推敲していく過程で提案があれば、いつでも変更を加えましょう。

(3)肉付けしたシナリオに従って、あまり深く考えずにパパっと書き出してしまいましょう。
この段階でも書いている間に変更したほうがよいとおもったら、前のシナリオにとらわれることなく変更します。
効果的な演出や、あざやかな物語が挿入できるとおもったら、のがさず追加しましょう。

そして最初のシナリオとあたらしいシナリオとの整合性を調整します。
必要に応じてセクションを大胆に挿入したり削除したり、最初の部分と終わりの部分の変更を納得いくまで試みます。
小説全体の最終的な仕上がりと食い違いがないように確認しましょう。

(4)テキスト全体を改訂します。
文章のリズム、エピソードの比率、微妙なニュアンス、シーンの移行がスムーズに行えて説得力があるかどうか、クライマックスなどの効果、ハラハラ感やおもしろさ、その場の空気のもっともらしさなど、さまざまな構成要素に注意を払いましょう。

(5)きちんとタイプされて出来上がった原稿を用意して、最終改訂を加えます。

#怪奇小説を書く際の覚え書き #ラヴクラフト

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