山麓王国

No.1184

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1183
全国の六所神社はそれぞれ、その土地周辺の六つの神社を合祀したもの、あるいは六柱の神々をまつった神社、という程度の意味のようです。

祭神もバラバラで、全国の六所神社を束ねる総本社があるわけでもありません。

なぜ全国の六所神社が、「六」という数字を選んだのか、「六所」という名前を選んだのかという点について、今回も最終的に謎解きのようになるカタチで、話します。

今回はちょっと話にまとまりがない、というか、複雑多岐にわたるので、覚悟してお読みください(笑)



ギズモさんは、六所神社からシオツチノオジを発見されましたので、まずそこから話をします。

宮城県の塩竈神社の別宮である塩釜六所明神には、六柱の神(猿田彦、事勝國勝、塩土老翁、岐神、興玉命、太田命)がまつられていますが、それぞれ名前がちがうだけでおなじ神なんだそうです。

それでふと気づいたのが、手塚治虫の『火の鳥』です。



火の鳥は、人間の輪廻転生を描く大作なんですが、この作品によく出てくるのが、猿田彦です。

どの作品にも、名前と人格を変えながら、猿田彦とおもわれる人物が出てくるのです。

まるで塩竈六所神社の祭神のように、みんなちがう名前なのに、おなじ猿田彦なんですよね。

手塚治虫の描く猿田彦は、鼻の長い男です。あるいは作中で突如鼻がふくれあがってしまう、という場合もあります。

これは、猿田彦が天狗信仰と結びついているという伝説からそういう描写にしたのでしょう。



ところで、猿田彦と天狗が同一であれば、シオツチノオジと天狗は同一なのでしょうか。

……しかしどうもこの三段論法は通じないようです。

シオツチノオジと猿田彦は同一です。

猿田彦と天狗は同一です。

しかし、シオツチノオジと天狗は同一ではありません。

仙台にある塩竈神社から東へ6kmほど離れた、太平洋の海岸沿いに、「鼻節神社」という神社があります。

ここの祭神は猿田彦の一柱です。

式内社ですから、由緒は古いです。

猿田彦と鼻節神社、ここから天狗信仰と猿田彦が結びついていった、と考えられそうです。

鼻節神社にはシオツチノオジはまつられていませんから、シオツチノオジは天狗とは結びつかないという理屈にもなります。



話があちこちにいって申し訳ないんですが、手塚治虫は、猿田彦という神のつかみどころのない多様性に注目していたのだとおもいます。

火の鳥に出てくる猿田彦は、おなじような風体でありながら、ちがう時代に、ちがう人格で登場します。

かれは物語の水先案内人であり、同時に主人公でもあります。

こういう描き方をした手塚治虫は、日本神話の重要人物でありながら、形を変えてあちこちに登場して水先案内をする猿田彦という神のことをよく調べていたのでしょう。



ところで、この猿田彦の多様性を説明するキーワードは、「岐の神」だろうとおもいます。

「岐」には、クナド・クナト・フナドなどいろんな読み方がありますが、もともとはイザナギが黄泉の国でイザナミと対決し、戻るときに「これ以上来るな」といって投げた杖が、来名戸祖神(クナト祖神)に変化し、これが岐の神であるというのです。

岐の神は、道祖神の意味もあり、道祖神と猿田彦もおなじであり、シオツチノオジともおなじ神であるともいいます。

道祖神ですから、つまり水先案内の意味を持つんですよね。

さらに興味深いのは、岐の神は仏教と習合していて、庚申信仰と結びついていたらしいのです。

そして仏教における地獄の六道(六趣)から衆生を救う「六地蔵」と、道祖神である岐の神がむすびつきます。



ここで話がもとに戻るんですが、六所神社。

なぜ六なのか、ということなんですが、ここからは毎度おなじみぼくの憶測の論理展開です。

これはやはり、神仏習合と神仏分離が絡んでるんじゃないでしょうか。

まず、地獄の六道の考えが神道と習合します。

そして六道から衆生を救うために、六柱の神様をまつる、あるいは六つの神社を合祀する。

六地蔵だとそのまま仏教になってしまうので、地蔵の部分を神様や神社にしたというわけです。

しかし神仏分離によって、仏教の六道、六地蔵の部分が由緒から抜けて、全国に六所神社という名前だけが残ったことで、ややこしくなった。

以前とおなじく、これも憶測ですから、ほんとうはちがう可能性もありますが、なぜ「六」なのかというひとつの推測にはなるようにおもえます。



きょうもそこそこの字数になったので、ぼくの相性の良い神仏の話については、次回以降ということで(笑)

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