山麓王国

No.844

Icon of nouennushi
作家のなだいなださん(1929-2013)は、社会問題を「わかり急ぐな」といいました。

いま起こった出来事を、いまわかろうとしたがる。けれど、そんなことはできないんだ、と。

社会問題が起こって、結果がぼんやりわかるのが10年後、さらに10年したらもうすこしわかるかもしれない。

社会問題の全体像が見えてくるのはそれくらいのスパンであって、いま起こったものごとの顛末を、いま知ることは不可能なんだというのです。



けれど、いま起こっている社会問題にいろんな理由をこじつけて、未来に起こることさえ、あたかもわかったかのようにふるまうような人もいます。

こういうしぐさは、いまだったら陰謀論というんですが、なださんが「わかり急ぐな」といった1985年の当時には陰謀論という言葉がなかったのでしょう。

なださんは「黙示録的な解釈」といいました。

黙示録というのは新約聖書の一部です。

きたるべき世界の終末の際、キリスト教が勝利することを預言(神託)という形で表現しています。

だれも世界の終末なんてわかりやしないのに、わかったようなことをもっともらしく書いているわけですから、キリスト教にはわるいけど、「黙示録 ≒ 陰謀論」とつなぐことはできるでしょう。

黙示録は、キリスト教が迫害されている地域の人たちを応援する目的で書かれたようですが、現代のわれわれも、ショック状態の中でものごとをわかり急ぐと、黙示録的な解釈にすがりついてしまう。

つまり、じぶんたちに都合の良い解釈に頼って、安心を得ようとしてしまうのです。



ウクライナとロシアの戦争が起こってから、いまイスラエルとハマスが戦争状態にある。

こういうことを結び付けて、「ほれみろ、戦争は連鎖するんだ。もう世界大戦が起こるんだ」という人がいる。

「自陣営の勝利を疑わない」という人もいる。

日本だってもう戦前なんだという人もいる。

みんなものごとをわかり急いで、黙示録的に自陣の勝利によって事態が解決することを期待し、その勝利が一刻も早く確約されることを望んでいる。

ただじぶんたちが安心したいがために、みんな心の中で武器を取り始め、いつの間にかほんとうの武器になっている。

しかし多くの人々にとって、この異様な心理状況の、その異様さに気づくのは、戦争が終わった後なのではないか。

あるいは戦後、世界の均衡が曲がりなりにもとれていたのは、この異様さからの戦争を経験して、異様だったことに気づいた人たちが多く生きていたからではないかという気がします。

編集

■複合検索:

  • 投稿者名:
  • 投稿年月:
  • #タグ:
  • カテゴリ:
  • 出力順序:

■新着画像リスト:

新着画像リストは出力しない設定になっています。

全230個 (総容量 183.18MB)

■日付検索:

■カレンダー:

2023年10月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031

■カテゴリ:

■最近の投稿:

最終更新日時:
2026年3月28日(土) 10時30分40秒〔7日前〕